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福井地方裁判所 昭和43年(わ)141号 判決

本店

福井県武生市北吾妻町二七番地

五十嵐株式会社

右代表取締役

五十嵐正二

本籍並びに住居

同所同番地

会社役員

五十嵐正二

大正四年三月二日生

右の者等に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官安保晃孝出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告五十嵐株式会社を罰金一五〇万円に

被告人五十嵐正二を懲役六月及び罰金三〇万円に、各処する。

ただし、この裁判確定の日から被告人五十嵐正二に対し、二年間右懲役刑の執行を猶予する。

被告人五十嵐正二において、右罰金を完納することができないときは、金一、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

理由

(犯罪事実)

被告五十嵐株式会社(以下被告会社という)は福井県武生市北吾妻町二七番地に本店を置き各種毛織物並びに合繊織物、各種既製服の販売を目的とする資本金六〇〇万円の株式会社であり、被告人五十嵐正二は被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人五十嵐正二は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一、昭和三九年八月一日より昭和四〇年七月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額は一、四五六万六、四四八円で、これに対する法人税額は五〇八万二、九〇〇円であるにもかかわらず、被告会社の記帳及び決算において売上を除外する不正経理を行い、これによつて取得した金銭を簿外の無記名預金架空名義預金とし、あるいは簿外で架空名義で株券等を買入れるなどして財産を隠し、昭和四〇年九月三〇日所轄武生税務署長に対し右事業年度における被告会社の所得金額は四六七万二、一九五円でこれに対する法人税額は一四三万五〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額との差額三六五万二、八〇〇円を免れ、

第二、昭和四〇年八月一日より昭和四一年七月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額は一、四五九万四、〇二六円で、これに対する法人税額は四九四万五、四〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法によつて財産を隠し、昭和四一年九月二九日所轄武生税務署長に対し、右事業年度における被告会社の所得は五七三万五、七九六円で、これに対する法人税額は一七六万一、二三〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額との差額三一八万四、一〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠)

判示第一事実につき

一、武生税務署長竜田弘作成の証明書二通(昭和三九年八月一日から昭和四〇年七月三一日までの事業年度分の確定申告書及び同事業年度の更正決定に関するもの)

一、古谷直二作成の査察事件調査事績報告書(昭和四二年一〇月二八日付)

一、法人税決議書(右同事業年度に関するもの)

判示第二事実につき

一、武生税務署長竜田弘作成の証明書(昭和四〇年八月一日から昭和四一年七月三一日までの事業年度分の確定申告書)

一、野木芳達作成の上申書

一、法人税決議書(右同事業年度に関するもの)

判示第一、第二事実につき

一、商業登記簿謄本

一、佐伯幸子、福田雄次、宇野亮、竹内昭男、高棹シズ子、右近つい子、牧野とし子、高橋忠、大塚岩雄、朝日政行、山岸幸、笠間景信、横堀道夫及び松山勉の、大蔵事務官に対する各質問顛末書

一、古谷直二作成の査察事件調査事績報告書一三通(昭和四二年一二月一五日付設立時及び各期末の現金有高調べ、昭和四三年一月九日付顛末書及び上申書よりの年度別入出金調、昭和四二年一一月一六日付年度別株式投信資金出入表、同日付年度別債権の出入表、同年一二月二一日付年度別預貯金等の財産増減、同年一一月二七日付福井銀行鯖江支店の簿外預金調、同年一〇月二三日付福井銀行武生西支店の簿外預金調、同年一一月三〇日付北陸銀行武生支店の簿外預金調、同年同月三〇日付住友銀行本店及び心斉橋支店の簿外預金調、同日付貸付信託残高調、同年一〇月二三日付金銭信託調、同年同月一二日福井銀行新福井支店の簿外預金調、昭和四三年一月一七日付役員賞与調)

一、五十嵐尚雄の大蔵事務官に対する質問顛末書二通

一、岡本良策作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書

一、羽多野鶴也作成の上申書

一、小西喜三郎作成の査察事件調査事績報告書八通(昭和四二年一〇月二日付同月三〇日付七通)

一、藤井忠作成の上申書

一、小西喜三郎、岡田隆、古谷直二、京藤一雄作成の各現金預金有価証券等現在高検査てん末書

一、京藤一雄作成の査察事件調査事績報告書二通

一、井上外雄作成の査察事件調査事績報告書二通

一、山岸幸作成の査察事件調査事績報告書三通

一、松田祐三郎作成の査察事件調査事績報告書二通

一、岡本良策作成の査察事件調査事績報告書

一、岡田隆作成の査察事件調査事績報告書三通

一、広部丈夫作成の査察事件調査報告書

一、山田清、池ノ上末吉、小西出昭竜、小林音三(二通)、山口具彦、木村修、平池己三男、田中稔夫、白船和已(三通)、久保田照雄、石黒光生(写)、井関繁雄(三通)、酒井正軌、保野孝蔵、井上禎夫(二通)及び山本修一の各大蔵事務官に対する質問顛末書

一、被告人五十嵐正二の大蔵事務官に対する質問顛末書八通(昭和四二年九月二一日付、同月二二日付、同月二七日付、同年一〇月二〇日付、同年一一月一日付、同月二〇日付、昭和四三年一月八日付、同年三月一三日付)

一、被告人の大蔵事務官に対する上申書四通(昭和四二年一〇月九日付、同年一二月一日付、同月六日付、同年一二月一八日付)

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、被告人の当公廷(第一回)における供述

一、押収の家計簿一冊(昭和四三年押第三九号の一)、同売上日記一冊(同号の二)、同得意先元帳一冊(同号の四)、同総勘定元帳二冊(同号の七及び八)、同金銭出納帳(同号の九及び一〇)

(適用法令)

被告人五十嵐正二の判示第一及び第二の所為はそれぞれ法人税法第一五九条第一項第七四条第一項第二号に該当するので所定刑中各罰金刑と懲役刑との併科刑を選択し、以上各罪は刑法第四五条前段の併合罪であるので右懲役刑については同法第四七条本文但書第一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、右罰金刑については同法第四八条第二項により金額を合算し、その刑期と金額の範囲内で同被告人を懲役六月及び罰金三〇万円に処し、犯情懲役刑の執行を猶予するのが相当であるので同法第二五条第一項によりこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、右罰金を完納することができないときは同法第一八条により、金一、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする。

被告会社の判示第一及び第二の各事実は法人税法第一六四条第一項第一五九条第一項第七四条第一項第二号に該当し、以上各罪は刑法第四五条前段の併合罪であるので同法第四八条第二項によりこれを合算し、その金額の範囲内で同被告会社を罰金一五〇万円に処することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 小河巌)

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